二国間関係情報~日本との関係
(1)科学技術の概況・エジプトの体制
エジプトの学術研究・科学技術は、研究者数や成果の点では概して中東・アフリカ諸国の中では高いレベルにあると言え、近隣国や欧米各国等との共同研究も盛んに行われている。エジプトには研究者が約12万人おり、政府支出に占める科学技術関係分はは約5億エジプト・ポンド(2014年)である(憲法では、GDPの1%以上を科学技術に充てるとの規定がある)。一方で、経済成長による雇用創出が国家の最大関心事であり、科学技術によるイノベーションが不可欠という考え方が国家的コンセンサスを得ている。
そのような中、エジプト政府は科学技術政策に関係する体制の強化に力を入れており、「高等教育省」、「科学研究省」(2016年12月現在、両省を1人の大臣が管轄)を置くとともに、「エジプト科学研究技術アカデミー」「科学技術開発基金(STDF)」を中心に、研究プロジェクトの実施・助成や研究者養成を進めている。
(2)我が国の協力
我が国はエジプト政府の要請を受けて、2008年から2013年にかけて「科学技術政策アドバイザー(JICA専門家)」を科学研究省に派遣、科学技術振興政策の計画・立案に関して助言を行った。2008年には「日本エジプト科学技術年」として、科学技術を通じて両国間の絆をより一層強めるための様々な行事を行った。また2010年6月には,「科学技術における協力に関する日本国政府とエジプト・アラブ共和国政府との間の協定(日・エジプト科学技術協力協定)」に署名するとともに、エジプト科学技術開発基金(STDF)と我が国の科学技術関連機関との協力が開始されるなど、日・エジプト間の科学技術分野での着実な協力が進められている。また、地球規模課題対応型技術協力として2008年から2014年にかけ、ナイル川流域における食糧・燃料の持続的生産のための研究プロジェクトを実施した。
(3)エジプト日本科学技術大学(E-JUST)
エジプトでは、日本の明治維新後の発展や、第二次世界大戦後の急速な経済発展の主な要因を科学技術政策、特に「工学・技術」にあると考え、日本の科学技術研究・教育の実績を高く評価している。これを受け両国の協力による「エジプト日本科学技術大学(E-JUST)」プロジェクトが、2008年10月から始まった。E-JUSTは、我が国が協力して、日本式工学教育・研究活動を行う、科学技術大学をエジプトに設立するというもので、中東及びアラブ、アフリカ地域における科学技術教育・研究の中核的拠点となることが期待されている。現在は大学院のみであるが、近い将来学部の開講も予定されている。
1998年、エジプトで研究、医療,産業への利用を目的とする第2の原子炉(22MW)がアルゼンチンの企業の技術協力のもと建設された(第1の原子炉は旧ソ連の支援により1961年に建設)。エジプトは核兵器不拡散条約(NPT)を1981年に批准しており、2010年には原子力規制法(Law
of Regulating the Nuclear & Radioactivity)が施行された。
2015年、エジプトでは停電が各所で頻発するなど電力需要が拡大していたため(2016年夏は電力供給が電力需要を上回った)、政府は、電力供給不足を補うための方策の一つとして、ロシアの資金・技術協力の下、初めての原子力発電所(4800MW)を地中海沿岸の北部ダバア(Dabaa:エジプト第2の都市アレクサンドリア西方約140キロメートルに位置)に建設し、2019年にも最初の原子力発電所を稼働させる方針。
|