エジプト基礎情報~社会
エジプトの総人口は9,200万人(2016年)であり、アラブ諸国において最大の人口数を誇る。人口増加率は約2.4%であり、エジプト国家人口評議会によれば、2030年には1億4,000万人に達すると推計されている。
また、30才未満が人口の3分2との人口構成(2016年)。
慢性的な失業問題や過密な居住環境、交通渋滞、環境汚染等、深刻な都市問題の解決をめざすためにも、急速な人口増加は現在のエジプトにおける最大の懸念材料となっている。
政府発表によると2016年9月の失業率は12.6%であり、2011年政変後の観光収入および投資収入の減少による経済悪化により、2010年3月より2.3%増加した。深刻な就職難を背景に、統計に反映されないインフォーマル・セクターの労働人口が多いという指摘もある他、若者及び女性の高失業率が深刻な問題となっている。失業者のうち、80%は29歳未満の若者であり、雇用問題は、社会の安定及び経済に極めて重要な影響を与えることとなる。
エジプトの平均寿命は男性68.8歳、女性73.2歳(2015年、WHO)。乳幼児死亡率(5歳以下)、妊産婦死亡率はそれぞれ20.3人/千人、34人/10万人(2015年WB)と依然高い数字にあり、特に乳児の呼吸器感染症、下痢症による死亡が多い。医師は28.3人/万人、看護婦は35.2人/万人(2010年、WB)。
また、健康保険について、現在政府は国民皆保険政策を進めており、カバー率は約1/3まで上昇してきている。なお、健康保険に加入していない労働者ならびにその家族も国立病院での治療、手術は原則無料である。
国立病院とは別に、設備の整った私立病院の設立が認められており、医療レベルも高いことから富裕階層等が利用している。
薬局については、公立と私立のものがあるが、先進国との合弁により設立された製薬会社による製品が数多くあり、また在庫薬品も比較的多く揃っている。価格は公立、私立とも政府統一価格となっている。
エジプトの教育課程は、幼稚園2年、小学校6年、中学校3年、高校3年の2・6・3・3制で、義務教育は小・中学校の9年間。公立の学校における教育は無料。就学率(グロス:2014年)は小学校、中学校、高校(技術学校含む)それぞれ103.9%、99。2%、72.5%となっており、また男女間の差は近年改善が見られ、現在ではほとんどない。
厳格な試験制度があり、年間の授業日数が少ない(130~150日)ことと相まって、暗記が学校教育の中心となっている。さらに児童数の増加に施設が追いついておらず、2部制や大人数での授業など教育の質の低下を招いている。一方で、特に都市部を中心に私立学校が増加しており、公教育を質・量の両面から補完する形になっている。
成人識字率(2015年)は国全体で75.8%であるが、女性は68.1%に留まっている。さらに、都市部に比べてと農村部では割合が低く、男女間格差、地域間格差の大きさが依然課題となっている。
エジプト政府は、国家開発の重要な柱として人材育成を掲げており、国家予算のうち、大学前教育に関してはGDPの4%以上、高等教育に関してはGDPの2%以上を充てることを憲法で規定すると共に、教育改革に積極的に取り組んでいる。
1994年に新環境法が制定され、大気、水質に係わる環境基準、事業所・工場からの排水・排ガス基準や自動車からの排ガス基準が同法に統一的に定められた。同法の執行猶予は1998年2月で終了したが、環境基準を満足する事業所等は多くはない。
大気汚染については、工場や自動車からの排出ガスが主な汚染源であり、特にカイロ及びその周辺、タンタ等デルタ地域の工業都市において汚染が著しい。
一方,エジプト政府は環境汚染がない処置をすることを前提に、2015年に石炭火力発電の建設を環境省が許可し、石炭火力発電所建設も進めている。
廃棄物については、カイロ他大都市圏にしか行政によるゴミ収集サービスがなく、地方の住民等は仕方なく運河への投棄や道路周辺への放置せざるを得ず、環境汚染が問題となっている。
なお、安全な飲料水の確保、下水施設等衛生施設へのアクセスについては、都市部を中心に上下水道整備による改善が図られてきているが、一方で農村部では、整備が追いついていない。
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