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エジプト医療情報 ( 2016年12月現在)
 

 6.旅行者のための医療案内

 

一般的エジプト衛生注意事項

 

 

   衛生・医療事情一般

 

エジプトは北緯22度から32度と南北に長く位置しており、国土の約94%が砂漠及び土漠に覆われ、大部分は乾燥熱帯地域に属しています。平均年間降雨量は、地中海沿岸が200ミリ程度であるのに対し、内陸部にあるカイロ周辺はわずか30ミリ足らずです。一般に冬季(11月~3月)と夏季(5月~9月)に分けられ、その間に短い春と秋があります。1月と2月が最も寒く、最低気温が5度以下になることもあります。2月下旬から5月上旬にかけては砂嵐(ハムシーン)がしばしば発生し、この時期にはアレルギー疾患(鼻炎・皮膚炎・喘息)や呼吸器疾患にかかる人が増加します。4月から10月にかけて気温は上昇し、 胃腸炎や脱水症が急増します。

 

医療水準は、比較的設備の整った私立病院において、急性虫垂炎などの小手術、骨折や外傷に対する処置ならびに正常分娩は可能ですが、基本的な衛生概念が欠如しているなど、安心して医療を受けられる水準には達していません。また、輸血の安全性にも問題があります。診察費や検査費用は前払い制で、クレジットカードはほとんど利用できません。総合病院の多くが24時間体制で診療を行っています

 

 

 

   かかり易い病気・怪我

 

(1)感染性胃腸炎(下痢症など):当地で最も頻繁に見られる疾患です。主に細菌やウイルスに汚染された飲食物を経口摂取することにより発症します。主な症状は腹痛、嘔吐、下痢ですが、発熱や倦怠感、血便等を伴うこともあります。潜伏期間はまちまちです。人から人へ直接うつることはありませんが、吐物や排泄物を介して感染することがあります。

 

(2)ノミ・ダニ:砂嵐の季節に多発するほか、年間を通じて発生しています。 一部ホテルの古い寝具、タクシーやバスの座席にも生息しています。衛生面に問題がありそうな場合は、虫除けスプレーの使用と虫の侵入を予防できるような衣類の着用をお勧めします。

 

(3)寄生虫症:ビルハルツ充血吸虫症、条虫症、異型吸虫症、アメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫症などが挙げられます。この中でも、ビルハルツ住血吸虫はナイル川に生息し、人がナイル川に入ることにより、その幼虫が経皮的に侵入して感染します。初発症状は血尿で、いまなおエジプト人の死因の上位を占める寄生虫症です。近年、異型吸虫に感染する在留邦人が増えています。

 

(4)A型肝炎:感染者から排泄される糞便で汚染された飲食物(野菜、水、貝類、ミルク等)を経口摂取することによって感染します。発熱、全身倦怠感、食欲不振が主な症状です。ワクチンを接種することにより予防が可能です。

 

(5)流行性脳脊髄膜炎:主な症状は発熱と頭痛です。通常、髄膜炎菌を鼻咽腔から吸い込むことにより感染します。エジプトでは健常者の約10%近くに保菌者がいるため、体調が悪いときには人ごみや公共交通機関の利用を避けるのが賢明です。カイロにある予防接種センターでワクチンを接種することが可能です。

 

(6)B型及びC型肝炎:感染者から血液を介して感染し,慢性の肝炎から肝硬変や肝臓癌に移行します。刺青,ピアス穴あけ,刺入を伴う民間療法,注射器やカミソリの使いまわしが感染の機会となります。

 

 

   健康上心がける事

 

(1)生水や水道水は 直接飲用に適していません。屋台や路地で販売されている飲食物(生ジュースを含む)も衛生上問題があります。感染性の胃腸炎予防のため、食事はホテルあるいは清潔なレストランで、よく加熱調理されたものを食べるようにしてください。

 

(2)夏季は日差しが非常に強く、上エジプト(ルクソール、アスワン、アブ・シンベル)では日中の気温が50℃近くになることもあります。観光は朝夕の比較的涼しい時間帯に予定してください。その際には日焼け止めを使用し、帽子着用の上、こまめに水分を補給するよう心掛けてください。

 

(3)医療費は日本に比べて高額になりますので、海外旅行傷害保険へ加入されることを強くお勧めします。

 

(4)当地は鳥インフルエンザ流行国です。海外渡航情報で流行状況をつねに確認してください。

 

(5)当地では、処方箋なしに抗生剤など多くの薬剤を薬局で購入することが可能ですが、小児の薬が入手しにくい上、品質やアレルギーの問題もありますので、飲みなれた薬を常備薬として持参してください。

 

(6)ナイル川では、ビルハルツ住血吸虫に感染する危険性があるため、遊泳はもちろんのこと、手足を水につけたりしないよう注意してください。

 

(7)地域によっては、野犬や野良猫に遭遇することがあります。これまでに狂犬病の発症も報告されていますので、できるだけ動物には手を出さないよう注意してください。

 

(8)カイロ市内では、交通マナーが悪い上、慢性的な渋滞による大気汚染が深刻化しています。住宅を選ぶ際には、なるべく交通量の少ない地域を選択することをお勧めします。

(9)中近東呼吸器症候群(MERS)が近隣国で発生しています。コロナウイルスによる死亡率の高い呼吸器感染症です。現在までに,エジプトでの感染は起きていませんが,流行の情報に十分注意して行動して下さい。

 


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