安全の手引き(2025年8月版)_II
令和7年9月15日
I はじめに 1 近年のエジプト情勢 2 犯罪発生状況
II トラブル予防のために 1 心構え 2 基本の安全対策 3 具体的な犯罪の態様 4 警察への届出 5 国際離婚と親権 6 テロ情勢等 7 その他
III 緊急事態対処マニュアル 1 平素の心構えと準備 2 緊急時の行動(一般商業便に搭乗可能な期間) 3 緊急時の行動(一般商業便に搭乗困難な場合) 4 チェックリスト
IV 参考資料 ○緊急連絡先 ○非常時のアラビア語 ○安全対策の資料
II トラブル予防のために
1 心構え
(1)自分の身は自分で守る「ここは日本ではない」ことを想起し、自分と家族の安全は自分達全員で守るとの高いレベルの意識が極めて重要です。何かあった時にどうするかについて、普段からご家族で相談してください。
(2)予防こそが最良の危機管理
予防に努力を惜しまないことが肝要です。その上で、常に最悪の事態を想定し、物心両面の準備を万全にする必要があります。
(3)目立たない、行動のパターン化を避ける、用心を怠らない
海外で安全に生活するための3原則です。現地の文化、風俗、価値観を十分考慮し、「郷に入っては郷に従え」の精神が重要です。
(4)ネットワークを作る
在留邦人、隣人、職場など様々な形で情報や援助を得られるネットワーク作りを心掛けることが大切です。
2 基本の安全対策
安全対策に「これで十分」ということはありません。可能な限りの対策を講じてください。また、日々の生活の中で、たとえば外出時に施錠を忘れることもあり得ます。防犯意識を持ち続けるようにしてください。(1)情報の収集
- ア 口コミ:在留邦人、同僚、隣人、使用人などから。
- イ 現地の報道・SNS:新聞、ラジオ、テレビ、ウェブサイトなどの報道やSNS。ただし、事案発生直後は根拠の不確かな内容やフェイク・ニュースも流れる点に注意。アラビア語もGoogle翻訳(アラビア語・英語など)で閲覧。
- ウ 日本の報道
- エ 大使館:電子メール(在留者は「在留届」、短期渡航者は「たびレジ」登録で、領事メールが受信可能)、ウェブサイト
- ア エジプトでの外国人向け医療費は安価ではありません。また、状況によっては先進国などへの移送が必要な場合もあり得ます(注:国外への緊急移送は通常1千万円以上を要します)ので、事前に海外旅行傷害保険へ加入されることを強く推奨します。なお、クレジットカードに海外旅行傷害保険が付帯していることがありますが、利用条件が付されていたり(例:旅費の支払いを当該カードで行っていること等)、補償金額が低額など十分なものでない場合もありますので、事前に条件や補償内容をよくご確認頂き、必要に応じて前記の海外旅行傷害保険に追加加入することをご検討ください。
- イ 可能な限り、推奨されている予防接種を受けるようにしてください。詳しくは「世界の医療事情(エジプト)」をご確認ください。
(3)滞在先
形態 | 対策 |
全般 |
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アパート |
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ホテル |
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(4)外出
形態 | 対策 |
全般 |
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交通ルール 交通マナー 道路事情 |
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徒歩 |
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公共交通機関 | [全般]
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個人事業者による移動手段の提供 | [マイクロバス(セルビス)]
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自家用車 |
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飲酒 |
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(5)詐欺
形態 | 対策 |
恋愛感情に乗じて金銭を要求する(いわゆるロマンス詐欺) |
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政府手続き関係者を装う |
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警察の捜査を装う |
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自室の点検を装う |
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営業実態を偽る |
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検査代行者を装う(証明の偽造) |
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(6)テロ
- 最新の治安情勢の入手に努める。
- 軍・警察・司法などの政府関係機関の施設や車両、主要インフラ施設、治安当局が立ち入り規制している場所などには近づかないようにする。
- 常に周囲の状況に注意を払い、騒ぎや急な人だかりなどの不審な状況、不審な物・人物を察知したら、速やかにその場を離れるなど安全確保に十分注意する。観光施設、公共交通機関、教会、モスクなどの外国人を含めた不特定多数の人が集まる場所を訪れる際には、特に注意を払う。
- エジプトでは、デモの実施には原則として治安当局への届出が必要だが、まれに無届のデモが発生することもあり。居合わせた場合は速やかにその場を離れるようにする。
- 実施日は金曜日の礼拝後(午後)が多く、実施場所はモスクや大学、大きな広場(タハリール広場等)などが多い。
(8)地方
主要都市以外は警察官の配置数が少なく、警察官による事件現場への臨場が困難です。
- 地方訪問の際は、より一層の安全対策に努め、移動先や到着予定時間を家族などに伝えた上で、各移動先に到着後、家族などに到着を伝える。
- 現地での緊急時の連絡先を確認する。
- 都市と比べて地方が安全とは限らないことに注意。
- 外国籍者が観光地から観光地への長距離移動(※)をする場合、基本的に事前に通行許可を取得する必要があるので、個人で移動せず、信頼できる現地旅行会社等に手配を依頼することを推奨。(※例:ルクソール-アスワン、ルクソール-アビドス・デンデラ、アスワン-アブシンベル等)
(9)薬物犯罪
エジプトでは、覚せい剤等の薬物に関する犯罪に対して、死刑を含む厳しい刑罰を設けています。
- 薬物には絶対に手を出さない。
- 見知らぬ人からの荷物、中身の不明な他人の荷物は預からない。
3 具体的な犯罪の態様
(1) 女性に対するハラスメント、犯罪- 外国人だけでなく、エジプト人女性多数も声をかけられる,体を触られる,追いかけられるなどの被害に遭い社会問題となっているが、男性が同行していない外国人女性が特に狙われる傾向がある。
- 時間帯や場所を問わずに起きているが、深夜、早朝、人気のない場所ではハラスメント以上の犯罪になる可能性があることに注意。
- 薄着がハラスメントの原因ではない。しかし、犯人が薄着の女性を狙う傾向がある点に留意。
(2)窃盗、強盗
形態 | 被害例 |
置引き |
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車上狙い |
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スリ |
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ひったくり |
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偽警察官 |
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路上強盗 |
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タクシー等での強盗 |
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カージャック |
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(3)詐欺
形態 | 被害例 |
いわゆる「ロマンス詐欺」 |
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寸借詐欺 |
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ビザ手続 |
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住居の点検 |
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ペットの輸出手続 |
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(4)誘拐
2011年以降、身代金目的の誘拐事件発生が時折報じられています。また、2015年7月にクロアチア人が誘拐され、その後殺害された事案も発生している他、リビア国境付近の地域では、近年においてもエジプト人の誘拐は比較的頻繁に発生している模様です。これまで日本人が被害に遭った報告例はありませんが、注意を払うことが重要です。
4 警察への届出
形態 | 対策 |
全般 |
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犯罪被害 |
[在エジプト日本大使館]
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交通事故 |
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5 国際結婚と親権
国際結婚をされた多くの方が幸せな生活を送られていますが、いろいろな理由から離婚に至るケースもあります。その際の手続きで多くの時間や費用を費やす場合や、子の親権を巡って訴訟に発展する場合もあります。
- エジプトでは、裁判所の決定で監護権がない親が国外に未成年の子を連れ出すことは刑事罰の対象となる可能性がある。
- エジプトでは、監護権を持つ親が、未成年の子の出国を禁じる措置(travel ban for minors)を講じることができる。
- エジプトでは、18歳未満のエジプト国籍者(日本国籍等との重国籍者を含む)が単独、或いはエジプト国籍を有しない保護者と共にエジプト国外に渡航する場合、事前に出国許可証を取得しない限り、原則として出国が許可されない。
- 欧米諸国を始めとして、未成年の子が親に同行する場合でも、もう一方の親の同意が必要となる場合がある(もう一方の親の同意書がないと飛行機に搭乗できない、入国できない場合もある)。
※当館では、未成年の子が日本の旅券を申請する際、両親双方の合意確認を行っています(申請書の法定代理人署名欄への署名に併せて、もう一方の親権者が作成(自署)した旅券申請同意書の提出が必要)。
6 最近のテロ情勢
こちらでご確認ください。
7 その他
(1)査証、出入国審査等(2)写真撮影禁止場所、アウトドアスポーツ(マリンスポーツ)
「III 緊急事態対処マニュアル」に続く