安全の手引き(2023年2月版)_II

令和5年2月28日

I はじめに 1 近年のエジプト情勢 2 犯罪発生状況

II トラブル予防のために 1 心構え 2 基本の安全対策 3 具体的な犯罪の態様 4 警察への届出 5 国際離婚と親権 6 テロ情勢等 7 その他
III 緊急事態対処マニュアル 1 平素の心構えと準備 2 緊急時の行動(一般商業便に搭乗可能な期間) 3 緊急時の行動(一般商業便に搭乗困難な場合) 4 チェックリスト
IV 参考資料 ○緊急連絡先 ○非常時のアラビア語 ○安全対策の資料

 

II トラブル予防のために

1 心構え

(1)「自分の身は自分で守る」:「ここは日本ではない」ことを想起し、自分と家族の安全は自分達全員で守るとの高いレベルの意識が極めて重要です。何かあった時にどうするかについて、普段からご家族で相談してください。
(2)「予防こそが最良の危機管理」:予防に努力を惜しまないことが肝要です。その上で、常に最悪の事態を想定し、物心両面の準備を万全にする必要があります。
(3)「目立たない」、「行動のパターン化を避ける」、「用心を怠らない」:海外で安全に生活するための3原則です。現地の文化、風俗、価値観を十分考慮し、「郷に入っては郷に従え」の精神が重要です。
(4)「ネットワークを作る」:在留邦人、隣人、職場など様々な形で情報や援助を得られるネットワーク作りを心掛けることが大切です。

 

2 基本の安全対策

 安全対策に「これで十分」ということはありません。可能な限りの対策を講じてください。また、日々の生活の中で、たとえば外出時に施錠を忘れることもあり得ます。防犯意識を持ち続けるようにしてください。
(1)情報の収集
  • ア 口コミ:在留邦人、同僚、隣人、使用人などから。
  • イ 現地の報道・SNS:新聞、ラジオ、テレビ、ウェブサイトなどの報道やSNS。ただし、事案発生直後は根拠の不確かな内容やフェイク・ニュースも流れる点に注意。アラビア語もGoogle翻訳(アラビア語・英語など)で閲覧。
  • ウ 日本の報道
  • エ 大使館:電子メール、ウェブサイト
(2)保険,予防接種
  • ア エジプトでの外国人向け医療費は安価ではありません。また、状況によっては先進国などへの移送が必要な場合もあり得ます。クレジットカード付帯保険では補償内容が不足する場合もあります。補償内容が十分でない場合は、他の保険への追加加入も検討ください(国外への緊急移送は1千万円以上を要します。十分な補償(治療費用保険金)かを確認ください)。
  • イ 可能な限り、推奨されている予防接種を受けるようにしてください。詳しくは「世界の医療事情(エジプト)」をご確認ください。

(3)滞在先
形態 対策
全般
  • 自室前まで第三者が入り込めないかを確認(敷地・建物入口の施錠,門番・警備,従業員の常駐の有無)。
  • 建物入口から自室までの経路に十分な照明が点灯するかを確認。
  • 地上階、2階、最上階は,外部からの侵入防止対策(ベランダ、窓の鉄格子など)があるかを確認(隣接する建物や樹木などとの位置関係によっては、その他の階も注意)。
  • 門番・警備、隣人、使用人、従業員との関係に留意する(良好な関係を心がけるとともに、不在期間など必要以上の情報を伝えない)。
  • 既設の錠前の鍵は、自分以外の第三者も持っているものとして行動。
  • 不特定多数が閲覧可能なソーシャルメディアで(家族分を含む)、長期間の外出が分かるようにしない。
  • 外出時は確実に施錠する(外部から侵入可能な場合は窓も施錠)。
  • 建物・自室出入りの際やエレベーター・階段を使う前に、不審な人物がいないかを確認。
  • 在室中は、チェーン錠・U字錠をかける。
  • インターホン、ドアスコープなどで、必ず相手を確認してからドアを開ける。
  • 警察・保健当局手続きや保守などで入室を求められる場合は、ドアを開ける前に門番・警備または従業員の立ち会いを求める(門番などが信頼できない場合は開けない)。
  • 緊急時の避難ルートを確認。
  • 既存部分に構造物を継ぎ足した建物に注意(倒壊などの危険性あり)。
アパート
  • 入居に際して、新しい錠前(ディンプル鍵のもの)に交換する。可能な限り2種類の錠前を付ける。交換作業は、自分で、または自分の直接監督下で実施する。
  • 鍵の管理を厳重にする。紛失の場合は新しい錠前に交換する。
ホテル
  • 客室備え付け金庫内を含めて、外出時に貴重品は部屋に残さない。
  • ドアが簡単に開かない工夫をする(ドアストッパーをドア下にかます、旅行用補助錠を付けるなど)。
  • 同行者以外と客室をシェアする場合は、貴重品を身から離さない。

(4)外出
形態 対策
全般
  • 目立たない(華美な服装を避け、現金や貴重品を人前で見せないようにする)。
  • 行動のパターン化(毎日または特定曜日の同じ時間に自宅を出る・帰る、場所に行くなど)を避けて、時間、場所、経路を時々変える。
  • 外出前に、家族などと移動先、帰宅予定時間を共有する。
  • 外出時には、身分証明書(パスポートまたはコピー)を携行する。
  • 夜間、早朝の単独行動、女性だけの行動を避ける。
  • 通行量の少ない道路での移動を避ける。
  • 口の閉まらないバッグに貴重品を入れない。
  • 歩きスマホ(通話を含む)をしない。
  • 人混みではスリや痴漢行為に注意。
  • 不審な人物、見知らぬ人を避ける(近づいてきたら,近くの商店などに助けを求める、大声で助けを求める)(外国人である日本人に何か尋ねる、助けなどを求めてくるのは不自然と考える)。
  • 相手が凶器を所持している場合や多数の場合は、抵抗せず、生命,身体の安全を最優先する。
  • 野犬に注意(2019年議会での農業大臣発言によれば,野犬は1,500万匹,野犬にかまれた人数は48万人/年(カイロ市内においても野良犬や野良猫が多いため、むやみに動物と接触しないことが重要。))。
交通ルール
交通マナー
道路事情
  • 自分が徒歩、運転のいずれの場合も,他の車,歩行者ともに交通ルール・マナーはないものとして注意を怠らない(一方通行やロータリーの逆走、信号無視、夜間の無灯火運転、著しく過積載の運搬車輌、車・歩行者双方の横断歩道の無視、歩行者による高速道路の横断などにとどまらず、想像を超えた行動がある)。
  • 歩道、車道ともに整備不良(穴、隆起、駐車車両、ゴミ、堆積した砂など)。
  • ※自動車の強制保険の対人賠償額は最大4万エジプト・ポンド(約17万円)。任意保険の加入率は非常に低い。判例によると、高額の対人賠償が認められた場合でも7千米ドル程度の模様。
徒歩
  • 高額なもの(スマートフォンを含む)は露出させずにバッグにしまう(ポケットからは抜かれる可能性が高い)。
  • バッグはたすきがけにせず、体の前で持つ。
  • バッグは車道と反対側に持つ。
  • つけてくる人、バイク、トゥクトゥクがないか注意。音や気配を感じたら振り返る。
  • 歩きスマホ、イヤホンでの音楽鑑賞は、防犯だけでなく、交通安全の観点からもしない。
  • 路上でスマートフォンを使う場合は、ひったくられにくい場所で(背後に壁がある、車道から離れている、多少の人通りがあるなど)。
  • バッグをひったくられそうになった際は大声で助けを求める(アラビア語で泥棒は「ハラーミー(Harami)」だが、何語でも)。一方で、けがをしないように無理な抵抗はしない。
公共交通機関 [全般]
  • 公的機関、大手バス会社が運行する鉄道、地下鉄、バス、ミニバスの運行は、個人事業者経営の下記車両との比較においては悪くないが、鉄道や船舶を含めて大規模事故が散発している。
  • スリや痴漢行為に注意。
  • ツアー、グループで行動する場合も、貴重品は自分で管理。
  • シートベルトがある場合は必ず着用する。
  • ※いずれの交通手段も。事故の際に補償があったとしても低額(2019年3月のラムセス駅での火災に際する遺族への補償額は1家族当たり8万エジプト・ポンド(約48万円(当時のレート)))。
個人事業者による移動手段の提供 [マイクロバス(セルビス)]
  • 特に中長距離移動での利用は、よく検討のこと(ほぼ毎週,幹線道路を移動中のバス、マイクロバスの大事故が報道されている。考えられる原因は、無謀運転、速度超過、整備不良、過積載、運転手の長時間労働・薬物使用など。)
[タクシー]
  • 声をかけてきたタクシーは極力利用しない。
  • 後部座席に座る。
  • 貴重品はトランクに入れず、携行する。
  • 運転手に車両の機械的トラブルと告げられ一時降車を求められる場合は、運転手の降車を確認後に降車する。
  • 相乗りは拒否する(相乗りされた場合は降車)。
[ライドシェアサービス]
  • 運転手がUber社やCareem社に登録されていることで一定の抑止効果はあると考えられるが、タクシー利用の注意に準ずる形で警戒を怠らない。
[トゥクトゥク]
  • 車両登録、運転免許の制度が未徹底であり、運転者が年少の子供であることもあることを踏まえて、利用は控える。
  • 車両の構造上、短距離以外の移動、交通量の多い道路の通行が見込まれる場合はリスクが非常に高いことに注意。
自家用車
  • 定期的な給油、整備を行う。
  • 乗車時に周囲に注意する。
  • 乗車中はドアをロックし、窓を閉める。
  • 乗車中は必ずシートベルトを締める。
  • 車を離れる際は、短時間でも窓を閉め、ドアをロックする。
  • 管理者のいる場所に駐車する。
  • 駐車車両に貴重品、貴重品があるように見えるもの(バッグなど)を残さない。
[事故の場合]
  • 安全な状況が確認されるまで降車しない(ゆっくりと人通りの多い場所に移動した後に降車など。ただし、危険を感じる場合は速やかに警察官のいる場所に移動した後、事故を届け出る)。
飲酒
  • アルコールを提供するレストラン、ホテルなど以外の場所(路上、公共の場所)での飲酒を避けること。
※エジプト全土の2021年交通事故死者数は年間7,101人(当地政府機関公表)との統計があり(2021年の日本の交通事故死者数は2,626人)、日本との単純比較では約2.7倍の交通死亡事故が発生している。

(5)詐欺
形態 対策
政府手続き関係者を装う
  • 手続は正規に行い、不適当な口利きの誘いは受けない。
  • 相手の身分証や所属などを十分確認する(自分の語学力で確認できない場合は、知人を同行して出直すことを考える)。
警察の捜査を装う
  • 身分証明書の提示を求める。
  • 所持品を相手に近づけない。
  • 相手が車両利用の場合は、ナンバーを控える。
  • 周囲の人に通訳の協力を求める。
自室の点検を装う
  • ドアを開ける前に門番・警備、ホテルの場合は従業員の立ち会いを求める。
営業実態を偽る
  • 携帯電話が唯一の連絡手段となっているところは避ける。
  • 営業資格、営業実態、事務所の所在・継続性を確認する。
  • 口コミを含めて情報を事前入手し、信頼がおけるかを確認。
検査代行者を装う(証明の偽造)
  • 事前に経験者などから情報を入手し、信頼がおけるかを確認。
  • 当該証明書の発行権限を持つ機関に照会する。

(6)テロ
  • 最新の治安情勢の入手に努める。
  • 軍・警察・司法などの政府関係機関の施設や車両、主要インフラ施設、治安当局が立ち入り規制している場所などには近づかないようにする。
  • 常に周囲の状況に注意を払い、騒ぎや急な人だかりなどの不審な状況、不審な物・人物を察知したら、速やかにその場を離れるなど安全確保に十分注意する。観光施設、公共交通機関、教会、モスクなどの外国人を含めた不特定多数の人が集まる場所を訪れる際には、特に注意を払う。

(7)地方

主要都市以外は警察官の配置数が少なく、警察官による事件現場への臨場が困難です。

  • 地方訪問の際は、より一層の安全対策に努め、移動先や到着予定時間を家族などに伝えた上で、各移動先に到着後、家族などに到着を伝える。
  • 現地での緊急時の連絡先を確認する。
  • 都市と比べて地方が安全とは限らないことに注意。

(8)薬物犯罪

エジプトでは、覚せい剤等の薬物に関する犯罪に対して、死刑を含む厳しい刑罰を設けています。

  • 薬物には絶対に手を出さない。
  • 見知らぬ人からの荷物、中身の不明な他人の荷物は預からない。
(重要)パスポートの紛失又は盗難被害に遭い、当館から新たなパスポートや「帰国のための渡航書」の発給を受けた場合、エジプト政府は入国時に使用したパスポートで出国することを出入国管理の原則としているため、当館における手続きのみならず、出入国管理当局における所要の手続き(1日~2日程度)を踏まなければ出国が許可されません。
 

3 具体的な犯罪の態様

(1) 女性に対するハラスメント、犯罪
  • 外国人だけでなく、エジプト人女性多数も声をかけられる,体を触られる,追いかけられるなどの被害に遭い社会問題となっているが、男性が同行していない外国人女性が特に狙われる傾向がある。
  • 時間帯や場所を問わずに起きているが、深夜、早朝、人気のない場所ではハラスメント以上の犯罪になる可能性があることに注意。
  • 薄着がハラスメントの原因ではない。しかし、犯人が薄着の女性を狙う傾向がある点に留意。

(2)窃盗、強盗
形態 被害例
置引き
  • 空港、ホテルロビー、レストラン、博物館の中庭などの不特定多数
    が出入りする場所、また、鉄道や長距離バスで被害。
車上狙い
  • 駐車時間の長短を問わず、路上駐車の場合に多く発生。
  • タイヤをパンクさせる細工(路上に突起物を置くなど)をした上で、タイヤ修理の手伝いを装って車中の貴重品を奪う。
スリ
  • 背中にチョコレートがついていると言って来た犯人がズボンのポケットから財布を抜き取る。
  • 刃物でバッグを切り裂かれて財布を盗まれる。
  • 子どもに囲まれ話しかけられた際に所持品をすられる。
  • 写真撮影中や買物中、バッグから所持品を抜き取られる。
  • 車中を含めて、落とした所持品を探して欲しい、気分が悪いなどで助けを求められ、対応して手伝っている間にバッグから所持品を抜き取られる。
ひったくり
  • 歩行中、後方から近づいてきたオートバイ、トゥクトゥクがバッグをひったくり。
  • 立ち止まって携帯電話を使用中に、携帯電話を奪われる。
偽警察官
  • 捜査と称して所持品検査を行い、現金、携帯電話などを抜き取る。
  • 路上での飲酒取り締まりを装い、現金、携帯電話などを没収する体で奪う(路上での飲酒を誘う仲間と偽警察官との共謀)。
路上強盗
  • 前方から来た男が、被害者の手をつかみ、片足を踏んで動きを封じ込めた上で金銭等を要求。
  • ストリートチルドレンの物乞いを断ったところ殴打される。
タクシー等での強盗
  • タクシー運転手による強盗。
  • 降車したところ、トランクに入れた荷物を持ち逃げされる。
  • トゥクトゥク乗車後、人通りの少ない場所に連れて行かれ、荷物を強引に持ち逃げされる。
カージャック
  • 運転車両が後続車両に接触されたので、状況確認のため降車したところ、後続車両の同乗者に車を奪われる。
  • 不審車両が執拗に運転車両を追跡。

(3)詐欺
形態 被害例
ビザ手続
  • 入国管理事務所でビザ関係の申請を行って窓口を離れたところ、数日かかる手続を即日で終わらせるとの誘いを受け,、指定の現金を渡したところ、犯人が姿を消す。
住居の点検
  • アラビア語の書類、身分証を提示した犯人が、政府規定上の必須作業と偽って配水管清掃や消毒作業を行った後、高額料金を要求。
ペットの輸出手続
  • 前払いで証明書費用を支払ったところ、証明書が届かず、連絡先(携帯電話)は不通となる。(短期間で移転を繰り返し、同様手口を重ねる)
  • 動物病院が検査結果証明書を偽造。

(4)誘拐

 2011年以降、身代金目的の誘拐事件発生が時折報じられています。また、2015年7月にクロアチア人が誘拐され、その後殺害された事案も発生している他、リビア国境付近の地域では、近年においてもエジプト人の誘拐は比較的頻繁に発生している模様です。これまで日本人が被害に遭った報告例はありませんが、注意を払うことが重要です。

 

4 警察への届出

 
形態 対策
全般
  • 残念ながら、強盗などの重犯罪以外については、十分な対応が行われないことがある。
犯罪被害
  • 被害にあったら、すぐに事件発生地を管轄する警察に届出する。
  • アラビア語のみを解する警察官が多いので、信用できるエジプト人に同行を依頼して届出を行うことを推奨。

[在エジプト日本大使館]
  • お気軽にご相談ください(助言などが可能な場合があります)。
  • 情報提供をお願いいたします(他の日本人の方が同様の被害に遭わないよう、個人情報が明らかにならない形で情報をまとめて,本手引きなどに掲載します)。
交通事故
  • エジプト人は、軽い接触は事故と考えない傾向がある点に留意。
  • 可能な限り、相手の車両情報(番号、車種)、運転手情報(氏名、連絡先)を記録。
  • 警察に届出を行い、ポリス・レポートを入手(保険手続に加えて、不当な刑事罰を科せられないために必要)。
 

5 国際結婚と親権

国際結婚をされた多くの方が幸せな生活を送られていますが、いろいろな理由から離婚に至るケースもあります。その際の手続きで多くの時間や費用を費やす場合や、子の親権を巡って訴訟に発展する場合もあります。

  • エジプトでは、裁判所の決定で監護権がない親が国外に未成年の子を連れ出すことは刑事罰の対象となる可能性がある。
  • エジプトでは、監護権を持つ親が、未成年の子の出国を禁じる措置を講じることができる。
  • 欧米諸国を始めとして、未成年の子が親に同行する場合でも、もう一方の親の同意が必要となる場合がある(もう一方の親の同意書がないと飛行機に搭乗できない、入国できない場合もある)。
※当館では、未成年の子が日本の旅券を申請する際、両親双方の合意確認を行っています(申請書の法定代理人署名欄への署名に併せて、もう一方の親権者が作成(自署)した旅券申請同意書の提出が必要)。
 

6 最近のテロ情勢

こちらでご確認ください。

 

7 その他

(1)査証、出入国審査等
(2)写真撮影禁止場所、アウトドアスポーツ(マリンスポーツ)