安全の手引き(2023年2月版)
(改訂) I はじめに 1 近年のエジプト情勢 2 近年の主な事件 3 犯罪発生状況
II トラブル予防のために 1 心構え 2 基本の安全対策 3 具体的な犯罪の態様 4 警察への届出 5 国際離婚と親権 6 テロ情勢等 7 その他
III 緊急事態対処マニュアル 1 平素の心構えと準備 2 緊急時の行動(一般商業便に搭乗可能な期間) 3 緊急時の行動(一般商業便に搭乗困難な場合) 4 チェックリスト
IV 参考資料 ○緊急連絡先 ○非常時のアラビア語 ○安全対策の資料
在エジプト日本国大使館
- 所在地:81 Corniche El Nile Street, Maadi, Cairo, Egypt
- 電話:02-2528-5910(閉館時:つながった後に「123」でオペレーター対応)
(日本から電話する場合は、国番号20の後,2-2528-5910) - メール:ryoji@ca.mofa.go.jp
在エジプト日本大使館では、各種事件・事故の予防や二次被害防止のための注意喚起を電子メールで在留届、たびレジ登録者に送信しています。
【3か月以上滞在される方は、忘れずに「在留届」を提出ください。】
- エジプト到着後直ちに当館に「在留届」を提出ください。(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnetでオンライン手続き可能です)
- 日本への帰国、国内外への転居、連絡先に変更がある際は、変更手続きください。上記サイトでのオンライン手続きに加えて、電子メールで当館に連絡いただいても対応可能です(電子メール宛先:ryoji@ca.mofa.go.jp)。
- 当館電子メールの送信先として、同居家族のアドレスも登録できます。
【3か月未満の短期滞在の方は、忘れずに「たびレジ」に登録してください】
- エジプト到着前から登録可能です。(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/で手続きください)
- 当館電子メール送信先として、家族・同僚などのアドレスも登録できます。
I はじめに
在エジプト日本大使館は、日本人の皆様の安全対策を最優先に取り組んで参ります。
皆様ご自身も、当地が外国であり、文化や習慣が決して日本と同じではないということを十分認識され、油断することなく、常に安全にご留意ください。この「安全の手引き」は、皆様がエジプトで生活する上で、自らの安全を自分で守るために有用と思われる各種情報をまとめたものです。この手引きが、少しでも皆様にお役に立てれば幸いです。
1 近年のエジプト情勢
(1)2011年1月25日に大規模デモが発生した後、デモとそれに伴う衝突で社会・治安状況が急速に不安定化し、2月11日にムバラク大統領が辞任しました。この間、警察・治安機関の脆弱化、外出禁止令,携帯電話・インターネットの遮断、ガソリンスタンドなどの閉店、商業フライトの運休などが起こりました。
(2)上記政変後、選挙を通じて上下院の第一党となったムスリム同胞団系の自由と公正党の大統領候補として当選、2012年6月に就任したムルスィー大統領は、就任一周年を機に起こった大規模デモ後、2013年7月に軍の介入を受けて解任されました。その後も、暫定政府反対派と治安部隊や同支持派との間でのデモ、衝突、またテロが続発しました。
(3)2014年6月のエルシーシ大統領の就任以後、2015年秋の議会選挙の実施(上記の自由と公正党は2014年8月に非合法化)や治安対策の強化などに伴い、デモ及びそれに伴う衝突は減少しています。同大統領は、2018年3月に再選されました。
(4)一方、軍・警察・司法当局,コプト・キリスト教徒及びこれらの関係施設などを目標としたテロ事件が断続的に発生しています。
(5)2017年4月のアレキサンドリア県とガルビーヤ県のコプト・キリスト教会での自爆テロ事件を受け、エジプト政府は非常事態宣言を発出し、その後、3か月ごとに切れ目なく同宣言を発出してきましたが、2021年10月26日に同宣言を延長しない旨の発表がありました。
(6)2017年11月の北シナイ県のモスクでのテロ事件を受け、エジプト政府は2018年2月からテロリスト掃討作戦「シナイ2018」を開始しました。シナイ半島でのこうした大規模な作戦に加えて、西方砂漠などで隣国などからの不法入国者の活動、武器の密輸などを防ぐ体制が取られています。
(7)二つの政変で警察・治安機関が脆弱化した時期に武器が流出したことや密輸により、殺傷力の高い武器(機関銃や自動小銃など)が一般市民を含めた社会に拡散しています。
(8)政変期以降の社会経済情勢や新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、多くのエジプト人は経済的に苦境にあると考えられます。
(2020年の貧困率(月収857LE/人以下)は29.7%)。
(9)2022年には物価の高騰や深刻なエジプト・ポンド安が進み、エジプトの経済情勢が不透明な中、窃盗等の一般犯罪の増加が懸念されます。
2 近年の主な事件
(1)2017年:コプト・キリスト教徒、治安関係者などを狙った大規模な事件が発生。コプト・キリスト教徒 関連 |
4月9日のガルビーヤ県タンタとアレキサンドリア県の同教会での爆弾テロ(前者が30人、後者が17人死亡)、5月のミニヤ県での同教徒搭乗車両への銃撃事件(28人死亡)、12月のカイロ県ヘルワーンでの同教会周辺での銃撃事件(市民10人と警察官1人死亡)など |
治安機関関連 | 6月のカイロ県マアーディでの警察官を狙った爆弾テロ事件(1人死亡)、7月ギザ県での検問所襲撃事件(5人死亡) |
シナイ半島関連 | 11月の北シナイ県でのモスク襲撃事件(300人以上死亡) |
(2)2018年(シナイ半島を除く):死者数が二桁となる事件はなかったものの、12月にカイロで外国人観光客が死亡する事件が発生(テロでの外国人死亡は2016年7月以来)。
コプト・キリスト教徒 関連 |
1月のギザ県での同教徒銃撃事件、8月のカリュービーヤ県での同教会付近の自爆事件、11月のミニヤ県での同教徒搭乗車両への銃撃事件(7人死亡) |
治安機関関連 | 3月のアレキサンドリア県での同県警察本部長暗殺未遂事件 |
外国人関連 | 12月のギザ県ピラミッド地区での爆発事件(観光バス乗車のベトナム人観光客死亡) |
(3)2019年(シナイ半島を除く):前年12月の事件から引き続き、カイロ首都圏での事件が複数発生。
カイロ首都圏での事件 | 2月のカイロ県イスラム地区での自爆事件(警察官3人が死亡)、3月のギザ県内リングロード(高速道路)での治安機関とテロリストの銃撃戦、8月カイロ県中心部での車両爆発事件(22人死亡) (その他に1月のカイロ県ナスルシティの教会付近での爆発物発見、2月のギザ県ギザ広場での爆発事件、カイロ県ヌズハ地区での不審車両から治安関係者への発砲事件) |
外国人関連 | 5月のギザ県ピラミッド地区での爆発事件(観光バス乗車の南アフリカ人7人他が負傷) |
(4)2020年:シナイ半島以外ではテロ事件は報道されていません(4月にカイロ県内で治安機関とテロリストの銃撃戦がありました)。
(5)2021年:シナイ半島以外ではテロ事件は報道されていません。
(6)2022年:12月イスマイリア県市街地での警察検問所襲撃事件(警察官3名と一般市民1名が死亡)。
3 犯罪発生状況
(1)推移など
○正式な統計がないため件数の推移の分析はできませんが、2011年の政変を期に急増した犯罪件数が近年は減りつつあることが認められます。
○発表されている項目の定義や発表形式が変わるため他国との比較はできませんが、下記件数を確認ください。
(参考:2021年の日本における検挙件数は殺人883件,強盗1,130件(出典:令和4年版警察白書))
(参考:2021年の日本における薬物の押収量は、覚醒剤998.7キロ、大麻樹脂2.9キロ、乾燥大麻377.2キロ、コカイン15.1キロ、錠剤型合成麻薬80,623錠(出典:令和4年版犯罪白書))
(2)留意すべき点
○2011年の政変以前は少なかった,銃器を使用した犯罪,自動車強盗(カージャック),住居侵入盗,誘拐といった犯罪が増加していると見られます。
○政変以前からあった,すり,置き引き,詐欺は以前以上に多発していると見られます。
○銃砲刀剣の不法所持の件数は近年下がりつつありますが、引き続き件数が多いことと殺傷力の高い銃砲が多く含まれる点に注意が必要です。
○違法薬物の犯罪検挙件数と押収された薬物の量が多い点に注意が必要です。
(3)件数
○犯罪検挙件数[出典 内務省フェイスブック]
犯罪計 | 重罪 | 殺人・強盗・放火・ 誘拐・官名詐称 |
銃砲刀剣 不法所持 |
違法薬物 | |
2019年計 | 107,434 | 2,741 | 50,917 | 54,736 | |
2020年計 | 24,219,776 | ||||
2020年計 (各月の合計) |
24,606,084 | 102,647 | 2,240 | 49,967 | 67,961 |
2021年計 (各月の合計) |
26,326,152 | 108,151 | 3,470 | 53,209 | 76,448 |
ライフル | 自動小銃 | 拳銃 | 密造銃 | 機関銃・ マシンガン |
RPG | 刀剣 | 武器密造所 | |
2019年計 | 4,987 | 69 | ||||||
2020年計 (各月の合計) |
8,178 | 4,812 | 2,971 | 30,374 | 39 | 1 | 73,875 | 75 |
2021年計 (各月の合計) |
7,970 | 4,654 | 3,036 | 37,496 | 40 | 0 | 76,720 | 63 |
○主な違法薬物の押収量[出典 内務省フェイスブック]
(軍(国境警備隊)の押収分を含まない。なお、軍は2019年に違法薬物48.5トン及び930万錠を押収した旨発表。)
大麻樹脂 (キロ) |
大麻草 (キロ) |
ヘロイン (キロ) |
覚醒剤 (キロ) |
合成麻薬 (キロ) |
あへん (キロ) |
エストロックス (粉末、キロ) |
各種違法薬物 (錠) |
|
2019年計 | 21,884 | 31,106 | 3,035 | 582 | 35,000,000 | |||
2020年計 (各月の合計) |
13,915 | 9,317 | 888 | 63 | 72 | 4 | 742 | 16,715,857 |
2021年計 (各月の合計) |
10,029 | 62,242 | 1,880 | 497 | 75 | 98 | 970 | 13,658,699 |
イ 過去との比較
○殺人[出典 2009-2012年:UNDOC,2014年,2017年:内務省ソースの国内報道]
2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2014年 | 2017年 |
912 | 1,839 | 2,703 | 2,207 | 2,890 | 1,360 |
○強盗[出典 2009-2012年:UNDOC,2014年,2017年:内務省ソースの国内報道]
2009年 | 2010年 | 2011年 | 2014年 | 2017年 |
732 | 694 | 2,673 | 2,107 | 925 |
○誘拐[出典 2009-2011年:UNDOC,2014年,2017年:内務省ソースの国内報道]
2009年 | 2010年 | 2011年 | 2014年 | 2017年 |
70 | 93 | 273 | 431 | 160 |